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秋の夜

夜が長い。
そう感じてしまうのは、秋のせいだろうか。
それとも、この胸をざわめかせる想いのせいか、
わからずにいる。
 
どんなに言葉で誤魔化しても、
どれほど表情で繕っても、
瞳だけは正直で、
熱のこもらない眼差しが、
戻らない心を教えてくれる。
 
自分の心を偽ってまでも
キミが手にしたいものは何?
本当の想いを隠してまでも
キミが望んでいるものは何?
 
何一つわからないまま、
今夜もキミのことを考える。
 
出逢った日のこと。
好きだと自覚した瞬間のこと。
想いを打ち明けたときのキミの顔や、
僕を呼ぶときの少し甘い声とか。
怖がりなくせにホラー映画を観たがったり、
テキトーな目分量なのに料理は抜群に美味しくて。
ちょっと外れたテンポで踊るダサダサのダンスも、
早起きが苦手でバタバタと忙しない朝も、
いつだって、キミといれば楽しかった。
どんなキミだって、僕は大好きだったんだ。
 
不安と苛立ちを抱えたまま
キミのことを考えている。
この長い夜が明けたら、
キミは答えをくれるだろうか。

朗読/山口龍海