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面倒くさい男

「うまくいかないなぁ…世の中って」
 
そう言って、長い溜息を吐き出す。
仕事と恋と、ダブルでやってきたトラブルに
僕は頭を抱えていた。
 
そんな僕に同情もせず、慰めのことばもくれず、
「ザマーミロ」とばかりに彼女は大笑いする。
うん、予想通りの反応。
だから呼び出したんだけどね。
 
人に弱みなんて見せたくない。
女性が相手ならなおのこと。
あわよくば、心の隙間にスルリと入ろうとする、
そんな誰かが相手なら、なおさらに。
 
だから、こんなときは彼女に限る。
僕の弱音を笑い飛ばしてくれるから。
モヤモヤも、イライラも、全部吐き出して空っぽになるまで、
とことん付き合ってくれるから。
安心して、弱みも本音もさらけ出せるんだ。
 
「落ち込んでる男を前にして、大笑いするか? 普通」
 
抗議めいたことばを言いながら、顔はつい笑ってしまう。
そんな僕に呆れたように
「ほんと、面倒くさいヤツ」という彼女。
でも、その顔も楽しそうに笑っているから、
うまくいかない世の中も、捨てたもんじゃないって思う。

朗読/蒔苗勇亮
 
at 2020/02/26 00:00:00