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果てなき

どこに向かっているのか。
自分でもわからないまま、ただ歩いている。
目的地どころか、右も左も、上も下も、
まったくわからない暗闇の中を。
僕はただ、歩いている。
 
持ち物は小さな灯りがひとつ。
消えることはない、
けれど、とても小さくて、
行く先を照らすことのない灯りだけ。
それ以外、僕には何もなかった。
 
そういえば、僕はいつから歩いているのだろう。
なぜ、灯りひとつ持って歩き続けているのだろう。
目的は?
行き先は?
僕は…、一体、何者だった?
それに対する答えは何ひとつ、僕の中に存在しない。
誰かに聞こうにも、ここには誰もいない。
それでも僕は、歩いている。
この足が止まることはない。
 
ふと、自分の向かう先に灯りを掲げてみた。
すると、小さな灯りの中に、
ぼんやりとひとつの光景が浮かび上がる。
そこには、僕がいた。
そしてもうひとり、誰かがいた。
 
夢なのか、現実なのか。
過去なのか、未来なのか。
その光景の意味もわからぬまま、
やはり僕は、歩き続ける。
 
どこへ行けばいいのか。
どこまで行けばいいのか。
果てのない暗闇の中、ひとりきり…。
僕はただ、歩いていく。
小さな小さな、灯りだけをともに。

朗読/櫻竜之介