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舞台にあがれ

カウンターのこちら側から、いつも見ていた。
恋が始まる瞬間も、終わっていく場面も、
この店に漂うように残る、その余韻も。
観客でしかないと、ずっと思ってきた。
 
だから今、ただ戸惑っている。
この状況を、何と説明したらいいのだろう。
カウンターに腰掛け、ニコリと笑う彼女は、
真っ直ぐにこの心を射抜いた。
 
誘うように視線を投げかけ、
惑わすようにカクテルで唇を濡らす。
その仕草にドギマギと心を騒がせるオレは、
まるで、初めて恋を知った中学生のようだ。
冷静な仮面を必死でかぶり直す。
動揺をさとられないよう。この心を見透かされないよう。
 
このまま負けっぱなしでいるつもりはない。
彼女の思惑に乗ったふりをしながら、
攻めに転じるには…さて、どうしたものか。
久しぶりのゲーム。最後に笑うのは…?

朗読/井せきただし
 
at 2020/03/27 00:00:00