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別れの季節

たとえば、

どうにもならない片想いをしているとして、

私が学生ならば、ただ春が来るのを待てばいい。

春と言っても、

恋が成就する幸せな結末という話ではない。

春という名の別れの季節が巡ってくるのを

じっと待っていればいい。

そういう意味だ。

 

決まった年月を過ごせば、

別れの日は勝手にやって来る。

ジタバタせず、もがきもせず、

少しだけ

苦い思いを味わいながら過ごせばいい。

時折、その笑顔をそっと盗み見て、

気づかれないよう、

その声に心を躍らせて、

チクチクとした痛みを胸に覚えながら、

その日がやってくるのを、

待っていればいい。

 

逢えなくなり、やがて時が経てば、

苦さも痛みを薄れ、想い出だけが心に残る。

キレイな想い出だけが。

 

けれど、大人になると、

他力本願は許されない。

いくら待っても、

別れの季節は巡ってこないのだ。

ならば、私はどうやって

この想いと決別すればいいのだろう。

 

決して叶うことのない想いを抱えたまま、

またひとつ、季節を見送る。

次の季節も、その次の季節も、変わらない。

私はただ、過ぎゆく季節を見送るだけ。

想い出にできない、苦さと痛みをとともに。