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第51回~第100回

第51回

心の真ん中に居座って、いつまでも出ていってくれない。
何度追い出しても、戻ってきてしまうたちの悪い人。
あなたじゃない人に恋をする。それがささやかな私の願い。

 

第52回

夢の中なら素直に言えるのに。照れずにまっすぐに心の内を。
いざ、キミを目の前にするとことばが出てこない。情けない。
そして男は、今夜も星に願う。夢で逢えますように、と。

 

第53回

自分の指先すら見えないほど、深く濃い闇の中、
光を求めてさまよい歩いている。もう随分と前から。
出口はあるのだろうか。僕は…存在しているのだろうか。

 

第54回

ちょっと小首をかしげてみれば、頭をなでてくれる。
こらえきれずに涙をこぼしてみれば、そっと抱きしめてくれる。
とてもやさしくて、呆れるほどチョロい。私のあの人は。

 

第55回

「ごめん」と言ったきり、彼は俯いて黙り込んだ。
彼女も何も言わず、彼をじっと見つめている。
ありふれた別れに観客はいない。ただ動かない2人がいるだけ。

 

第56回

ずっと一人でいい。そう思って歩いてきた。
これからもそうして歩いていくつもりだった。
でも今は、隣を歩く人がいる。それが、幸せと知った。

 

第57回

好きなものの順位は、くるくる変わる。
小説も映画もお菓子も、新しいものに目移りしがち。
でも、1位だけは変わらない。何だかわかる?

 

第58回

森の奥には何があるのか。どうしても知りたくなった。
「行ってはいけない」の言葉に耳を貸さず、
たどり着いた古い城。そこにいたのは…。

 

第59回

「またね」と言って違う道を歩き出したふたり。
次の約束はできないけれど、いつかきっとまた。
歩いていく道の先が交わることを信じて。

 

第60回

いつかキミと見た風景に、ひとり佇んでいる。
記憶の中と何ひとつ変わらない。隣にキミがいない以外は。
キミが想い出にかわるまで、ボクの旅は続く。

 

第61回

休日出勤だからと、今日のデートはキャンセル。
なのに、あなたが知らない誰かと笑い合う姿を見つけてしまった。
なるほどね。ならば、嘘つきに贈る「サヨナラ」の準備を始めようか。

 

第62回

桜のつぼみがほころび始め、風も春色に染まる頃、
冬の女神はひっそりと塔を出て、白の国へと帰っていく。
春の訪れを喜ぶ人々は気づかない。その凛とした美しさに。

 

第63回

家具も想い出もすべて運び出し、空っぽになった部屋。
あんなに狭いと文句を言っていたのに、今は妙に広く思えた。
新しい部屋でキミではない人と、僕はこれから暮らしていく。

 

第64回

コツコツコツと後ろで響く靴音。つかず離れず。
走り出すのも、立ち止まるのも不正解な気がした。
規則正しく歩き続ける夜道は、どこまで…?

 

第65回

雫がこぼれ落ちないようにと夜空を見上げれば、
まあるく満ちた月が、じわりとにじんで揺れた。
キミも同じ月を見ているだろうか。僕の知らない人とふたりで。

 

第66回

夢への近道があるとしたら、キミはどうする?
ズルいと罪悪感を覚えるかい? ラッキーだと喜ぶかい?
神様は言う。どっちだっていいのさ。決めるのはキミなんだから。

 

第67回

何も感じない。喜びも悲しみも、痛みさえも。
何も見えない。目の前にあるはずのあなたの顔すら。
最後に残ったのはこの想いだけ。それもやがてが消えていく。

 

第68回

いつもキミのそばにいるよ。うれしいときはボクに話して。
泣きたいときはボクをぎゅーっと抱きしめてよ。
何もできないボクだけど、いつまでも、キミのそばにいるよ。

 

第69回

忘れてしまいたい。あなたとのすべてを。
でも、忘れたくない。ふたりで過ごした日々を。
想い出を両手いっぱいに抱えたまま、途方に暮れる。

 

第70回

「キレイだね」「美味しいね」「楽しいね」
そう言い合える人がいることが幸せだったなんて、
そんな些細なことが幸せだなんて、彼女は知らなかった。

 

第71回

花は、咲けば散る運命にある。だからこそ、美しく咲き誇るのだ。
そんな話をしてくれた人は、もう隣にはいないけれど、
せめて、散る花のように美しく咲いていたい、と彼女は笑った。

 

第72回

いつ途切れてもおかしくない細い細い糸。
ふたりを繋ぐには頼りなくて、危うくて。
それでも、離せない。だから、離さない。

 

第73回

男がいた。暗闇の中にポツリと立っていた。
声をかけようと思うが、なぜか音にならない。
ジワリと何かがこみ上げ、ハッと見れば、男がニヤリと笑った。

 

第74回

甘い言葉になんて騙されない!
やさしい態度に絆されたりしない!
好きになんて、絶対ならない…んだから!

 

第75回

「どこへ行くの?」そう聞かれたけれど、自分にもわからない。
いつからなのか、どこからなのか。いつまでなのか、どこまでなのか。
彷徨える男は、ただ前に進むだけ。彼の行き先を誰も知らない。

 

第76回

ある日、猫がやってきた。まるで「ただいま」とでも言うように。
そして、そのまま我が家に居着いてしまった。「当然だろ?」という顔で。
ねぇ、もしかしてキミなの? 応えるように猫が「にゃおん」と鳴いた。

 

第77回

泣かない、と約束した。だから、空を見上げる。
「あぁ、キレイだな」と、思わずつぶやく。
涙の代わりにこぼれた言葉は、少しだけ心を明るくしてくれた。

 

第78回

どんなに表情をつくろっても、心だけは正直で。
逢うたびにじくじくと傷んで、何度もカサブタになって、
また剥がれて…。それでも彼女は今日も笑顔だった。

 

第79回

キミは魔法使い。だれも知らないけど、ボクは知っている。
だってキミは、笑顔ひとつでボクを幸せにできるんだから。
キミは魔法使い。ボクだけの魔法使い。

 

第80回

この気持ちは、箱に入れて、そっとしまっておこう。
ふいに開いてしまわぬように、幾重にも幾重にもリボンをかけて。
いつか想い出にかわる、その日まで。

 

第81回

名も知らぬ真っ赤な花が咲いていた。
まるで君を隠すように。守るように。
そこから出られない君は、ただ静かに笑うだけ。

 

第82回

心に刺さったトゲは、どうやっても抜けなかった。
ちくちくと痛みを与え続けて、彼女に存在を主張する。
時が過ぎれば、それすら感じなくなるだろうが。

 

第83回

「あなたは誰?」とキミは不思議そうに首を傾げる。
忘れてしまったのかい? なんてキミは残酷なんだろう。
あんなに「好き」と言ってくれたのに…夢の中で。

 

第84回

ひとりは気楽でいい、と彼は思った。
誰にも邪魔されない時間は心地よく、幸せすら感じていた。
だから、自分が泣いていることに彼は気づいていない。

 

第85回

毎日顔を合わせているのに、肝心なことに気づかない。
意地を張って、空回りして、もぉ、焦れったい。
そろそろ自覚したら? 恋の女神がそっぽをむく前に。

 

第86回

好きな人の視線の先に誰がいるか、なんてすぐにわかる。
だっていつも見ているから。なんでもわかってしまうのだ。
けれど彼女は、自分を見つめる視線には、まだ気づかない。

 

第87回

今日もいつもの道で、気になるあの娘とすれ違う。
声をかけたいな。名前を知りたいな。仲良く、なりたいな。
だから「ワンっ!」と吠えてみたら、ご主人さまに怒られた。

 

第88回

彼女は何度目かの恋をした。楽しくて苦しい恋だった。
それを失くしたとき、もう二度と恋はできないと思った。
けれど、彼女はまた恋をする。それは、明日かもしれない。

 

第89回

「ありがとう」と、少しはにかんでキミが言う。
その笑顔のためなら、ボクはスーパーマンにだってなれる。
だけどね、キミがいなくちゃ何もできない意気地なしなのさ。

 

第90回

一緒にいることが、いつの間にかあたりまえになっていた。
だから、安心していた。油断していた。いや、思い上がっていた。
永遠に続くものなんてないって、知っていたはずなのに…。

 

第91回

ちょっと憂鬱な月曜の朝。それが、あの日から変わった。
駅のホームで見つけたキミのこと、まだ何も知らないけれど、
ひとつだけ知っている。その横顔がボクを元気にしてくれるってこと。

 

第92回

昔からおしゃべりは苦手だった。
言えずに飲み込んだ言葉は、この胸にどんどん溜まっていく。
今日こそは、たった2文字にありったけの想いを込めて…。

 

第93回

「ごめん」なんて謝らないでほしかった。
だってそれは、私のためじゃなくて、彼女のため。
ふたりの未来を守るためだって、知っているから。

 

第94回

ある朝起きると、ボクは猫になっていた。
けれど、キミがいて、ボクを膝の上に乗せてやさしくなでてくれる。
こんな暮らしも悪くないな。ゴロゴロと喉を鳴らしながらボクは思った。

 

第95回

「遅くなってごめん」と彼は言う。後悔をにじませながら。
彼をずっと待っていたはずの彼女は何も答えない。
だってもう、彼の言葉は彼女には届かないのだから。

 

第96回

夢の中で私があなたに言う。「ありがとう」と。
あなたは少し困ったように笑って「サヨナラ」と言った。
すべては夢の中の出来事…現実はもっと、残酷だ。

 

第97回

「ただいま」の言葉が明かりのない部屋に吸い込まれていく。
疲れた身体を引きずるようにして力なく電気をつける。
リビングに今も残るキミの余韻。それが僅かな慰めだ。

 

第98回

ボクのお母さんは忙しい。だから、ボクをかまってくれない。
話しかけても無視するし、抱きしめてもくれない。寂しい。
そんな小さなつぶやきは届かず、その姿を見ることもできない。

 

第99回

長い長い上り坂を、男は淡々と登っていく。
なぜか、も考えず。どこへ、とも知らず。ただ登っていく。
たどり着く先に、きっとあの笑顔が待っていると信じて。

 

第100回

彼は、今日も変わらず交差点を渡る。
彼女は、今日初めてこの交差点を渡った。
ふたりの未来は、まだ誰も知らない。