トップ  > Night★Cap Story  > 三日月

三日月

夜空にぽかりと浮かぶ三日月のハンモック。
そのうえで、ゆらりゆらりと揺れながら、
ひとり、ダークブルーの闇を漂っている。

見下ろせば、地上は色とりどりのネオンで
沸き立つように賑やかだ。
うらはらに、シーンと静まり返った空の上、
ゆらりゆらりと泳いでいる。

「寂しくないの?」

誰かの声が聞こえた気がして、
そっと三日月から起き上がる。
周囲を見渡してみるけれど、
都会の夜空には、
濃いブルーと暗いグレーが混じり合う闇が広がるばかりで、
誰の姿も見えやしない。
ここには私ひとりだけ。
ずっとひとりで揺られている。

もう一度、三日月に身を預けて
ゆらりゆらりと揺れながら、地上の灯りを目で追えば、
楽しげなスイングが聞こえてくるようで
ふと口元がゆるんだ。

夜空にぽかりと浮かぶ三日月のハンモック。
今夜も地上を見下ろし、
寂しい心がひとりきり、ゆらりゆらりと闇を泳ぐ。
 


朗読/空閑暉