ことばや


「出張ことばや」、始めました!
いとうかよこ原作の脚本をプロの声優たちが朗読する「出張ことばや」。
15分ほどの短編から60分ほどの長編まで、

時間や場所などに応じて、さまざまなストーリーをご用意。
皆様の企画に沿った朗読お届けします。
図書館や学校での朗読会、イベントのゲストとして、など
いつでも、どこへでも、出かけてまいります。
ご相談、ご質問はお気軽に、お問い合わせフォームからどうぞ!

 

 

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セオリー

恋愛ドラマはいつだって、
反目しあう彼女と彼が、最後は恋人同士になる。
それがいわゆる、セオリーってこと。

ところが現実は、そう簡単でもなければ、甘くもない。
こちらを先輩とも思わぬ反抗的な態度。
明らかに他の男性に対するのとは違うそっけなさ。
それはもう、照れかくしとかいうレベルにはなく、
どこからどう見ても
「キライ」というサイン、としか思えない。

それに対し、こちらはといえば、
彼女のサインをなぞり返すことしかできない。
自分を嫌っている相手に愛想よくしっぽを振るほど
オレは大人でもなければ、子どもでもないのだ。

だからせめて、自分の気持を悟られないよう
何重にもラッピングをしてしまい込み、
精一杯の強がりでコーティングしている。

誰の目から見ても反目しあう彼女とオレは、
いつでも、いつまでも、互いにそっぽを向いたままで
向かい合うことなどありえない……はずだった。

今日も仕事の合間に、気づかれないよう視線を送る。
なるべくさり気なく、なるべく密やかに。
昨日と変わらない、いつものオレの習慣だ。
ところが、今日は少し、いや大きく違っていた。
外そうとした視線の端に、
まっすぐに飛び込んできたものがあった。

それは、紛れもない彼女の視線。
ゆっくりと、いっそ恐る恐る、視線を元に戻してみる。
と、彼女とオレの視線がピタリと重なった。
彼女の瞳には、戸惑いと驚きと、
そして、ほのかな喜びが映っていた。
たぶん、オレの瞳にも同じ物が映っているはずで、
彼女はオレから視線を外せなくなっている。
ちょうど今のオレと同じように。

あれっ?
もしかしたらこれ…セオリーってこと?

朗読/西藤東生
ストーリー/いとうかよこ
at 2018/07/18 23:00:00