昔々、あるところに、
ひとりぼっちの子猫がいました。
いつからひとりだったのか、
子猫にはわかりません。
親とはぐれてしまったのか、
それとも捨てられてしまったのか。
気がつけば、
たったひとりで街をさまよっていたのです。
子猫は知っていました。
生まれた時からひとりぼっちの僕は
この先も、ずっとひとりなんだと。
ある日、ひとりぼっちの子猫は
ひとりぼっちの女の子に出会います。
小さな女の子は、
とてもきれいな洋服を着ていました。
けれど、ぜんぜんうれしそうじゃありません。
寂しそうに瞳を揺らしながら、
ポツン、とひとりで佇んでいました。
女の子はわかっていました。
誰からも愛されていない私は、
ずっとひとりぼっちで生きていくのだと。
おずおずと子猫に近づいてきた女の子は
ちょこんとしゃがみ、
「おまえも、ひとりなの?」
と、子猫に話しかけました。
きょとん、と女の子を見上げる子猫の背を
女の子は恐る恐るといった風にそっとなでます。
子猫は初めて感じていました。
小さな手から伝わってくるぬくもりを。
そして、女の子も初めて感じています。
やわらかくてあたたかい、とても小さな命を。
子猫と女の子は目を合わせ
まるで気持ちが通じ合ったかのように
楽しそうに笑いました。
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