ことばや


「出張ことばや」、始めました!
いとうかよこ原作の脚本をプロの声優たちが朗読する「出張ことばや」。
15分ほどの短編から60分ほどの長編まで、

時間や場所などに応じて、さまざまなストーリーをご用意。
皆様の企画に沿った朗読お届けします。
図書館や学校での朗読会、イベントのゲストとして、など
いつでも、どこへでも、出かけてまいります。
ご相談、ご質問はお気軽に、お問い合わせフォームからどうぞ!

 

 

ケータイサイトQRコード

RSS1.0    RSS2.0 

雨が泣く

天気予報を裏切っていきなり降りだした雨。
慌てて駆け出す人たちを横目で見ながら
冷たい雫に打たれるまま立ち尽くしていた。

濡れるにまかせて佇む私に、
傘をさしかけてくれるやさしい手はもう、ない。
冷えて凍えていく身体を、
かばうように包んで温めてくれる胸も、ない。
だから、ここから一歩も動けないでいる。

いつも、たったひとことが言えなかった私は、
作り笑いばかりが上手くなって、
心を偽ることが当たり前になって、
大切なものを手放してしまった。

「淋しい」と言えばよかった。
「会いたい」と、言えればよかった。

素直に涙を流す術を知らない私の代わりに
舗道を叩く雨が泣いている。
どんどん激しくなる泣き声は
止むときを知らず、舗道を叩き続ける。

すべてこの雨が、流してくれればいいと思う。
この心に、この身体に、刻まれた記憶も、
過ごした時間も、くすぶったままの想いも、すべて。

そして、私という存在さえも、
跡形もなく流してくれればいいのに、と願った。
 


朗読/山口龍海
ストーリー/いとうかよこ
at 2018/06/11 23:00:00